resfest〓ミシェル・ゴンドリー&スパイク・ジョンズ

大阪で開かれた第2回(のはず)resfestの看板プログラム「MICHEL GONDRY RETROSPECTIVE」と「SPIKE JONZE RARITIES」に行ってきました。入りは両方とも会場席数の半分弱。かなり寂しい感じだったけれど、やたら外人が多い(あれは関係者だったのだろうか?)。 あと、なんばHatchの音響セットのボリュームがやたら大きくて、来年からは是非改めていただきたいなぁと思った。逆に興味深かったのは、上映がビデオプロジェクターでの映写だったこと。デジタルカメラで撮られている部分が妙に生々しく映り、通常テレビで見ている感覚と違うのが面白かった。
さてまずは「MICHEL GONDRY RETROSPECTIVE」。上映内容がすでに見たことのあるものが3分の1くらいだけだったというのもあり、かなり新鮮だった。特にフランスで撮られた初期の作品群は、日本ではあまり見られないものではないかと思う。中でも「LA TOUR DE PISE: JEAN-FRANCOIS COEN」が秀逸。歌詞の言葉が、すべて街角の看板やネオンの言葉とシンクロしていると言うもので、それはそれはもう超絶としか言いようがない。しかも間奏場面でさりげなく「guiter」「bass」とかの看板が写るユーモラスな演出もほほえましい。元ネタはボブ・ディランのドント・ルック・バックか、プリンスのアルファベット・シティか?(ちょっと深読みしすぎ?) この手法の延長線上に、ケミカル・ブラザースの「STAR GUITAR」やホワイトストライプスの「THE HARDEST BUTTON TO BUTTON」があると思う。どれも映像で行った「音楽の視覚解体作業」なのだ。「LA TOUR DE PISE: JEAN-FRANCOIS COEN」は歌詞を、「STAR GUITAR」はリズムを、「THE HARDEST BUTTON TO BUTTON」はドラムを解体している。早い話、耳の聞こえない人に聞こえる音楽を作っているようなもの。ミシェル・ゴンドリーにこの手法でPV作られるのは、喧嘩売られてる気もするなぁ。でもって、そういうことができるのなら私的に、彼に是非ミュージカルを作っていただきたいと思うのだ。ミュージカルも映像による解体作業だと、私が思ってるからなんですが、すでにケミカル・ブラザースの「LET FOREVER BE」やダフト・パンクの「AROUND THE WORLD」でそうしたアプローチはしてるし(ビョークのBACHELORETTEはまんまミュージカルだし)、21世紀のミュージカルを作れるのはゴンドリーしかいないと思った。
ミシェル・ゴンドリーの別の側面はビョークの「HUMAN BEHAVIOR」や、レディオヘッドの「KNIVES OUT」の系統だ。ココではもう真正面から、その楽曲の世界をそのまま再現しようとする、ある意味不器用なミシェル・ゴンドリーがいる。それはまた、それで味があってかわいいのだけれど、前者の仕事を見てると同一人物の作品とは思えないポエムな(もしくは愛に満たされた)世界だ。今回あらためて「HUMAN BEHAVIOR」を観て、その作品のよさが分かったし、ビョークの持っている凶暴さ(クマ)と、臆病さ(ハリネズミ)と、音楽(蛾かな?)の関係が、見事映像に表現されてることを発見した。多分、ミシェル・ゴンドリーって人がよくって、押しも強くないし、っていうような人なんだろうなぁ。
でもって一方の「SPIKE JONZE RARITIES」の方だけど、こちらの見ものはなんと言っても「TORRANCE RISES (1999):DIRECTED BY LANCE BANGS WITH TORRANCE COMMUNITY DANCE GROUP」。これはファット・ボーイ・スリムのビデオがMTVアワードにノミネートされ、ステージでTORRANCE COMMUNITY DANCE GROUPが踊るまでを追ったドキュメンタリー、でもって偽ドキュメンタリーという一本。というのもTORRANCE COMMUNITY DANCE GROUPは、スパイク・ジョーンズがファット・ボーイ・スリムのビデオを作るためにでっち上げたものだからだ。ここでスパイク・ジョーンズは偽名を語り、よれよれのトレパン履いてダサいメガネして、ほかのダンサーと振り付けについて喧嘩して見せたり、トーランスという街への愛を語って見せたり、無茶苦茶芸が細かい。そしてさらに本物のMTVアワードのステージに、そのトレパン姿であがり偽名で押し通してしまう。実にあっぱれな偽ドキュメンタリー。本番でもヘロヘロのダンスを繰り広げて、これがまた大爆笑。この年ベストビデオアワードは、結局このTORRANCE COMMUNITY DANCE GROUPが獲得してしまい、リッキー・マーティンやマドンナが物凄い憮然とした顔してるのも見もの。多分、スパイク・ジョーンズが友達と楽しむためだけに作ったっぽいのだけど、楽屋落ちもここまでやると最高です。